水素の未来
水素がエネルギー問題と環境問題を救う?
これまで、長きに渡って水素の魅力をご紹介してきました。水素研究は現在進行中の学問でありますが、それゆえに、人類や地球が抱える大きな問題を解決する可能性を秘めているといえるでしょう。その大きな理由の一つが、水素は燃焼しても地球温暖化の原因と言われる二酸化炭素や、空気汚染の原因である窒素化合物などを排出せず、水しか排出しないこと。そのため、地球環境に影響を与えることがありません。化石燃料のように有限の資源でもないので、エネルギーをめぐる争いも起きにくくなるでしょう。
一方で、水素エネルギーにはまだまだたくさんの課題があります。その最たるものが、水素の作り方です。現在の技術では、水素を燃料として利用するために、その製造工程でたくさんの化石燃料を消費してしまい、運搬や保存にもエネルギーが必要です。単純な計算で言えば、化石燃料よりもエネルギー効率が悪い、という指摘もあります。けれども、たとえば、風力発電や水力発電等で水から水素を生み出したり、化石燃料をなるべく使わずに水素を作り出す方法も研究されています。実現すればまさに夢のエネルギーとなることは間違いありません。
宇宙で一番多く存在している元素は水素です。未来の科学は水素をいかに活用するかがひとつのポイントとなるかもしれませんね。
高騰する医療費問題も水素が解決?
2005年、太田成男教授によって始められた水素の医療分野などへの活用の研究は、2007年にネイチャーメディシン電子版に論文を発表したことから大きく発展しました。今では、世界中から英文の原著論文が130以上も発表されており、すでに臨床試験が始まっています。
現在、日本では国民医療費が年々増加し、30兆円の規模となっており、この医療費の増加を抑制することが急務となっています。水素の医療活用の研究はまだまだ始まったばかりですが、その結果は人類の未来を明るく照らしているといえるでしょう。
水素水がもっと身近になる未来
こうした水素の流れを受けて、水素水の研究および産業も活発化しています。市販されている水素水の種類もここ数年で数倍に増え、消費者が水素水の質や水素水の味で選べる時代が訪れるようになりました。
一方で、さまざまな水素水のブランドが乱立したため、中には質の悪い水素水を販売する業者も増えています。商品によっておよそ0.2ppm~1.6ppmと溶存水素量に差があるのが実際です。さらには、この溶存水素量を明示していない商品も出回っています。消費者も商品を選ぶ知識と厳しい目が求められていると言えます。
水素水は、生産した時から消費者が飲むまで、いかに溶存水素量を保つかがポイントとなっています。現在は、アルミパウチでのボトリングが一番良いとされていますが、ボトルやアルミパウチなどの包装材の技術が進めば、コンビニや自動販売機などで気軽に水素水を手にいれる時代がくるかもしれません。