水素研究の歴史
水素研究の歴史
これまで紹介してきたさまざまな水素の魅力。実は、この研究が本格的に盛んになったのはこの数十年の話です。地球が生まれた時から豊富に存在した水と水素ですが、豊富にありすぎるがゆえ?か、長い年月の間、その力を見過ごされてきました。
水素が実用的な研究対象として見直されるようになったのは、第二次世界大戦後と言えます。それは、宇宙開発の歴史がスタートした時期でもありました。宇宙で最も多く存在する気体である水素が、地球には「水」という安定した形でたっぷりと存在しています。各国の研究者は、水素が宇宙にたっぷりと存在するということを知った時に、地球の未来を考えてこの「水素」の利用へと思い至ったのではないでしょうか。
この水素研究の大きな道筋は二つにわかれます。ひとつは、前回のコラムでも紹介した燃料としての活用。そして、もうひとつが人体への好影響を期待する医療です。いずれの研究・技術開発も未だ発展途上であり、さまざまな課題は残されています。けれども、徐々に成果をあらわししつつあるのも事実です。水素研究が形ある実学として私たちの生活に活かせるよう、さまざまな試みが続いているのです。
水素研究と医療への応用
水素研究の第一人者は、太田成男教授です。太田教授は、2005年から水素に着目して研究を始め、2007年にはネイチャーメディシン電子版にその研究成果を発表しました。
この研究発表をきっかけに、世界中で、水素の研究が進められることになります。2012年までに世界中で発表された水素の論文は250以上。日本国内では40以上の研究機関が水素や水素水の研究を進めているとも言われています。
現在では、水素や水素水を医療に応用することを目的とした医師たちの研究会も発足しており、さまざまな可能性が高まっています。これからもさらなる発展が期待できると言えるでしょう。
水素が金属になるかもしれない?
前回紹介した水素エネルギーの研究に加え、水素のさらなる可能性を探る研究も始まっています。たとえば、金属水素。水素は、マイナス259.2℃以上マイナス252.6℃以下の状態だと液体になりますし、圧力をかけることで水に溶け込ませることができます。これらのように、高い圧力をかけたり、何らかの負荷を加えることで、水素が金属化するのでは、と考えられているのです。
この研究は現在仮説段階で、未だそれを裏付けるような実験や研究結果は発表されていません。けれども、もしも水素が金属化すれば超伝導が可能になり、よりエコな社会が実現したり、さまざまなものづくりの現場の技術が大幅に革新するのでは、と期待されています。
過去から現在、また将来にわたりますます熱が高まる水素の研究について、目が離せないと言えそうですね。